とてもとても良い本でした。
やっぱりわたしは、この人の、
人のこころの中の細部を、綺麗で曖昧な、
ふわっとした、きらっとしたような言葉で表現するところ
がとても好きなようです。
その中には、根拠のないなんだかわからない底力みたいなものがあって、
とても心に沁みて勇気づけられる。
それは、ドカン!と心に刺激をあたえるものとは少しちがって、
じわじわくる感じです。
この小説の中では、
人と人が関わり合う上で、とても面倒で愛おしいこと。や、
なんとなくやっていればテキトーな位置におさまるようになっていること。や、
それでも現実の問題からはすぐに飛び出せたりできないこと。
なんだかわからないけど目に見えない不思議なことがおこること。を、
色んな「さきちゃん」の生活を通して描かれています。
色んな人の生き方があって、色んな感じ方がある。
読み終わると、
フッと余計な力が抜けて、
別の力が湧いてくるみたいで、
さ、美味しい晩ご飯をモリモリ作って大好きな人と一緒に食べよう、
って素直に思えてしまう。
そうやって、平凡だけど大胆に、
生きていくこと、暮らすことを楽しんでしまえ!と思わせてくれる、
そんな小説でした。